かつて、この大地を焼き尽くすほどの戦争があった。
国境付近で起きた取るに足らない領地争いは、瞬く間に諸国を巻き込む底なしの沼となり、大陸が築き上げた千年の歴史を、わずか数年で灰燼に帰した。
勝者なき戦火の果てに待っていたのは、塗り潰された地図と、祈りさえ忘れた死者の山だけだった。
人々が積み上げた文化も、未来を語る平穏も、すべては戦火のもとに消え去った。
空は重く澱み、大地は活力を失い、数億を数えた命の灯は、風前の灯火のごとく吹き消された。
もはや、この焦土に旗を立てる意味を知る者すら、どこにもいなかった。
――そして、十有余年の月日が流れた。
世界はいまだ、癒えぬ傷痕を抱えて喘いでいる。
打ち捨てられた版図では、戦火の残り火を糧とする略奪者が跋扈し、微かな復興の足音をかき消していく。
それでも、人々は泥濘の中に失われた輝きを求め、再び、その足を前に進めようとしていた。
これは、そんな灰色の時代を、明るくたくましく生き抜いた、一人の可憐な少女の物語である。
※※第50話でストック尽きたので、不定期更新になります※※