「お姉様、お水を持ってこさせましょうか?」
可憐な妹の微笑みに、家族全員が熱っぽい視線を送る。だがリリアーヌには見えていた。その笑顔の裏にある、人を操る「魅了」の魔力を。
落馬の衝撃で前世の記憶を思い出したリリアーヌは、自分がこの世界の「背景」でしかないことを知る。妹を引き立てるための、水属性しか持たない無能な駒。
だが、覚醒した彼女の器には、火・風・土・光・闇……この世のすべてを支配する理が刻まれていた。
目立たず、騒がず、適当に卒業して、北方の領地で自給自足の生活を送りたい。
そんな彼女の願いをよそに、妹の暴走と、氷の瞳を持つ婚約者カイルの執着が、彼女を世界の中心へと押し出していく。
「お望みならお相手しましょう。ただし、私の静寂を奪った代償は高くつきますよ?」
泥の中から立ち上がったリリアーヌが、真の魔法の深淵を見せつける。