「こんなはずではなかった……」
「犯した罪の証を、目の前から消してしまいたかったの」
「私は貴方の、免罪符を持っているかのような振る舞いが、昔から大嫌いです」
「君は最期まで、俺の傍にいてくれるんだな」
「君を、国母にしてあげたかった……」
帝国の皇女に生まれながらも、都から遠く離れた西で育てられた季翠(きすい)。
不遇な扱いを受けていた彼女は、突如十四歳の時に都に呼び戻されることとなる。帝国の使者として、有力貴族の家督争い、戦乱に巻き込まれながら、次第に帝国の隠された秘密にかかわっていく。
策謀、恨み、嫉妬、忠誠、家族愛、友情、情愛、恋慕、そして約束と秘密……。帝位を巡る人々の思惑が錯綜する中、運命に翻弄される季翠が目にするものは————。