不定期更新ですが……
グレイヴァル辺境領の若き領主ヴェイン=グレイハルトは、ある冬の夜、叔父ガレンの謀叛によって全てを失った。
領地。仲間。信頼していた家臣。
そして神に祈ることさえも——逃亡の夜、懺悔を打ち明けた神官が同じ口で密告をしたと知ったとき、ヴェインの信仰は静かに死んだ。
残ったのは、怒りと、腰の短剣一本と、生き延びることへの執念だけだった。
流れ着いた先は、無法地帯ダスクマーレ。
誰も来たくて来たわけではない、追われた者と捨てられた者の吹き溜まり。
そこで彼は三人の仲間を得た。傭兵崩れのクロード、情報屋のペトラ、そして廃村で一人祈り続けていた少女エラ。
武器は剣ではない。言葉と頭と、人を読む目だ。
ヴェインは動き始める。
外交、謀略、内政——戦場で刀を交わすより、その前に勝敗を決める。
「風見鶏」と呼ばれ、嘲られながら、それを看板に変えて。
しかし乱世は、計算通りにだけは動かない。
飢饉が来る。疫病が来る。そして東の果てから、大陸を呑み込む軍勢が来る。
謀略では守れないものがある。そのことをヴェインは、最も大切なものを失うことで知る。
これは復讐の物語ではない。
いや、最初は復讐だった。
それがいつしか野心になり、大義になり、そして——王冠になった。
灰の中から王は生まれる。しかし王冠は、何人かの血で染まっている。