前世は管理栄養士。残業と薄給に疲れ果て、「次こそゆっくり休みたい」と願ったまま転生した。
今世は貴族の娘として生まれたが、婚約者に「地味すぎる」と夜会の場で婚約破棄された。
——これで、やっと休める。
そう思ったのも束の間。没落しかけた家のために、翌日には求人票を探していた。
見つけたのは「ヴァルク公爵家 料理人急募・住み込み可」の貼り紙。自分のペースで、食材と向き合うだけの仕事。
(これ、前世より楽では?)
私には転生以来「食材の声が聞こえる」スキルがある。食材の効能を活かして料理を作ると——長らく眠れなかった公爵様が、久しぶりにぐっすり眠った。
それからというもの、公爵様が毎日厨房に来るようになった。
「地味すぎる」と言われたこの静けさを、公爵様は「落ち着く」と言った。
休みたいだけなのに。
なぜか、溺愛されそうになっている。
前世でも今世でも、休み方を間違え続けている女の、やわらかな話。