目が覚めたら、知らない天井だった。
いや、正確には知っている天井だ。崎山ゆうの部屋の、崎山ゆうのベッドの上。
でも俺は——崎山ゆうじゃない。
気づけば転生していた。男女比2:8という、男性が極端に少ない現代日本に。
社会は男性を「保護対象」として扱う。女性は男性に近づきすぎないよう配慮し、男性は女性と目を合わせることすら稀だという。法律は普通でも、空気が違う。距離感が違う。当たり前が、違う。
そんな世界で俺がやったことは——挨拶しただけだ。
「おはよう」
たったそれだけで、妹が固まった。母が目を潤ませた。クラスメイトが廊下で噂になった。
俺はただ、普通にしていただけなのに。
これは、「普通」が規格外になってしまった男の、ちょっとおかしくて、少し切ない日常の記録である。