「お幸せに」と、微笑みながら心は壊れていた。
卒業記念舞踏会で突然婚約破棄を宣言した第一王子アルヴィンは、聖女フィオナとの新たな婚約をその場で発表した。
十年間、王妃になるためだけに積み重ねてきた努力も、耐えてきた孤独も、すべてが一瞬で踏みにじられる。あまりのショックに令嬢として致命的な失態を晒しながらも、令嬢エレシアは気高く一礼し、二人を静かに祝福してみせた。
帰宅後、初めて父の前で崩れ落ちる私に、父は静かに告げる。
「もう、王妃にならなくていい」
婚約破棄の噂は瞬く間に王都中に広まり、屋敷に引きこもる日々が続く。そんな私の前に現れたのは、隣国の第一王子レオンハルト。「氷の王子」と呼ばれる彼だけが、十年前の小さな約束を覚えていた。
「今日は、泣いてもいい」
その一言に救われた私は、彼に導かれるように少しずつ外の世界へと踏み出していく。市井の暮らしに触れ、領地の仕事を手伝い、孤児院の子供たちから「ありがとう」と言われる喜びを知る。
誰かに選ばれるためではなく、自分の意思で生きること。
一方、王宮では次第に綻びが生まれ始めていた。聖女は王妃教育を拒み、外交は失態続き。アルヴィンはようやく気づき始める。
「エレシアなら、どうしていただろうか」と。
すべてを失った令嬢が、自分の足で立ち上がり、真実の愛と誇りを取り戻すまでの成長譚。
捨てた王子が後悔した時、もう彼女は振り返らない。
注意 この小説は一部にヒロインがかなり屈辱を味わうシーンがあります。苦手な方はご注意ください。