クラウゼン伯爵家の長女レオノーラは、生まれた時から王太子ルシアンの婚約者として育てられてきた。
しかし王宮の舞踏会で、信じがたい光景を目にする。
王太子の隣にいたのは、可憐で美しい妹フィオナだった。
しかも婚約者はすでに妹へ変更済み。
父も王太子もそれを知っており、レオノーラ本人にだけ知らせていなかった。
それだけではない。
彼らは、王太子妃となる妹を、これからもレオノーラが侍女として支え続けるのが当然だと言い放つ。
奪われるだけなら、まだよかった。
けれど、自分の努力も能力も人生も、すべて妹のために使えというのなら――。
怒りに飲まれた瞬間、レオノーラの中で眠っていた火竜の力が目覚め、王宮の大広間は炎に包まれる。
暴走を止めたのは、女王の異母弟にして王国最強の魔術師――黒杖卿と呼ばれる、シグヴェルト・エルダーシュタイン公爵だった。
地下牢で目覚めたレオノーラは、自分が魔術式を読む力に目覚めていることを知る。
そしてシグヴェルトは告げる。
「私のものになれ」
処刑か、幽閉か、黒杖の眷属となるか。
選択肢のない状況で、レオノーラは彼の手を取る。
これは、都合よく使われ続けた長女が、奪われた人生を取り戻していく物語。