王太子妃候補レティシア・フォン・アルベルティーヌは、婚約披露宴の席で王太子エドガルドから突然婚約破棄を告げられた。
その場にいた王妃候補の家庭教師、マリアンヌ・ド・ベルティーユは、怒りのあまり手にしていたグラスを握り砕く。
幼くして母を亡くしたレティシアに、礼儀も、言葉も、泣かない方法も教えてきたのはマリアンヌだった。
完璧に育て上げた教え子を、ぽっと出の子爵令嬢に蹴落とされた挙げ句、その子爵令嬢の教育係まで命じられる。
冗談ではない。
「お断りいたします」
王太子からの命令を、マリアンヌは静かに拒絶した。
さらに王太子は、彼女を侮辱し、王宮から出ていけと命じる。
だが王太子は知らなかった。
マリアンヌがただの家庭教師ではないことを。
銀梟教育基金理事長、王妃慈善局制度設計者、王立女子実務学院共同創設者、各国の王妃や大使たちが一目置く、王宮の信用の半分を握る女であることを。