「君を愛することはない。愛しているのは妹だ」
二十三歳の誕生日、ベルフォール伯爵家の長女エレノアは、八年連れ添った婚約者ジュリアンから婚約解消を告げられた。
暖炉のある部屋も、誕生日の席も、母の形見も、恋文を書く時間も、ずっと妹へ譲らされてきた。婚約者まで欲しいというのなら、これを人生最後の譲り物にしよう。
「『愛することはない』とおっしゃる婚約者は、妹にお譲りします」
ただし、母の財産も、自分の言葉も、残りの人生も、もう譲らない。
家を出たエレノアを迎えたのは、返事を急かさず、何もできない日にも彼女を大切にするヴァレール公爵アレクシスだった。食べたい物を選ぶことから始まった新しい暮らしの中で、エレノアは少しずつ、自分の望みと幸福を取り戻していく。
一方、エレノアが代筆した恋文によって結ばれた妹と元婚約者は、姉が今後も二人を支えると思い込んでいた。だが、嘘と浪費と無断使用を重ねるたび、「真実の愛」の暮らしは自分たちの手で崩れていき――。