ゾンビに噛まれて死んだ私は、終末の日の朝に戻っていた。
会社へ向かうエレベーターの中。スマホの表示は、4月12日、9時01分。
世界が壊れはじめるのは15時。残りは、6時間しかない。
前の時、義母と弟と4歳の娘は、最初の何日かでいなくなった。
次の階で降りて、電話を四本かける。
保育園には「今から迎えに行きます」。義母には米と油を、卒論を抱えた弟にはスコップと野菜の種を頼んだ。自分はネットスーパーを三店に分けて注文し、カートが3台になるまで売り場を回る。
演習中で連絡のつかない自衛官の夫には、メッセージを一通だけ。
「必ず探しに来て」
15時。終末は、1分も遅れずに来た。
タワーマンションの28階で、私と娘、義母、弟の四人は扉を閉ざす。
電気が止まり、水が止まる。壁の向こうからは、隣の部屋の物音が聞こえてくる。
夫からの返信はない。既読さえつかない。
前世で見た2年分の記憶と、6時間で買い集めた箱の山。
それを使い切ってでも、今度はこの四人を一人も欠けさせない。
迎えが来なければ、こちらから行く。あの人が守っている街まで。
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。