伯爵令嬢のエリアナは、壊れた物を元通りにするだけの地味なスキル【修復】の持ち主。派手な治癒魔法を使う聖女の妹と比べられ、家族からも婚約者である王太子からも「出来損ない」と蔑まれてきた。
ある日、妹の策略によって「聖女の儀式を妨害した」という濡れ衣を着せられ、王太子から婚約破棄を言い渡される。
「君の役立たずな【修復】スキルなど、この国には不要だ!」
たった一人、国外へ追放されたエリアナが流れ着いたのは、呪われた大地と恐れられる極寒の辺境。そこで彼女は、呪われた武具のせいで誰にも触れることができず、「呪われた公爵」と人々から忌み嫌われる青年、カイ・フォン・アークライトと出会う。
カイの纏う禍々しい呪いを、エリアナが【修復】スキルで浄化してしまったことから、彼女の運命は大きく動き出す。
彼女の力は、ただの「修理」ではなかった。呪いや穢れ、人の心の傷すらも「本来あるべき姿」に戻す、唯一無二の奇跡の力【原状回復】だったのだ。
枯れた大地を蘇らせ、壊れたゴーレムを忠実な僕にし、呪われた公爵の凍てついた心を温かい愛で満たしていくエリアナ。彼女の噂は瞬く間に広がり、辺境の地はかつてないほどの豊かさに包まれていく。
一方その頃、エリアナを追放した王国では、聖女である妹の力がなぜか弱まり始め、原因不明の奇病が蔓延していた。かつてエリアナを捨てた王太子たちは、全てを解決できるのが彼女の力だと気づき始めるが、時すでに遅し。
「どうか国を救ってくれ!」と頭を下げる彼らに、公爵に甘く蕩けるように愛されるエリアナは、穏やかに微笑んでこう告げるのだった。
「申し訳ありませんが、私にはこの地で『修復』すべき、大切な日常がありますので」
これは、地味な力しか持たないと虐げられた令嬢が、自分の本当の価値を見つけ、不器用で心優しい辺境の公爵様から世界で一番愛される、幸せな逆転溺愛ストーリー。