Bランク冒険者のカイルは、ダンジョン最深部で宝箱を開けて死んだ。
ミミックだった。
——目覚めたら、そのミミックになっていた。
手も足もない。
あるのは、蓋だけ。
移動手段は、ズズズと滑るだけ。
コミュニケーション手段は、パカパカするだけ。
絶望的に不便な箱生(はこせい)の始まりかと思いきや——
蓋の裏側に、とんでもない取説が書いてあった。
〝収納〟(更新)
体内に物体を格納できる。
格納中の物体は劣化しない。
格納した物体の性質を読み取り、
再現・強化することができる。
収納? 再現? 強化?
どうやら俺、やばい力を持っているらしい。
試しにそこらのゴブリンを宝箱の中に入れたら、ホブゴブリンになった。
武器も、魔法も、さらに強くなった。
……なに、これ。
元冒険者の知識で人間の戦術を教え、
『収納チート』で仲間を強化し、
魔物を従えて強化していく——
これは、最弱の宝箱が『魔物側の勇者』として
仲間を集め、進化させ、人間との対等な世界を目指す物語。
あーあ、冒険者のときより、よっぽど面倒な箱生だ。