異世界で「大聖者」と呼ばれた伝説のヒーラーは、天寿を全うした――はずだった。
目を覚ますと、そこは北海道の片隅のおんぼろ牧場。生まれ変わった姿は、まさかのサラブレッドの仔馬。
(やれやれ……今度は四つ足の世界か)
指もない。呪文も唱えられない。おまけにこの体、魔力の器が小さすぎて、魔法を使うたびに白目を剥いてズドーンと眠りに落ちる。
それでも、目の前で困っている者がいれば治してしまうのがヒーラーの性。瀕死の母馬を治しては寝て、骨折した仔馬を治しては寝て。あだ名は「寝太郎」。
そんなじじい(中身)を一目で見初めたのは、心臓を病んだ車椅子の少女・優芽。彼女の愛馬「ユメノワスレナグサ」となったじじいは、こっそり少女を癒しながら、なぜか競走馬として走らされることに。
隠居してのんびり暮らしたいだけの大聖者、疲労も故障も自分で治せる反則ヒーラー馬が、競馬界の常識をうっかり破壊していく。
治して、走って、煽って、寝る。世界一よく眠る三冠馬(中身はじじい)の、のんびりできない第二の馬生。
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