日本で『雨に濡れてると溶けてしまう』という事実が初めて確認された時期、それはまだ明確にはなっていない。大正末期には判っていたらしいが、それがいつの間にか何も判らなくなっていた。
東京には人工三千万人と、全人口の約四割弱が暮らしている。
そこでは屋根に覆われた生活が送れるようになっており、人々の関心が雨よりは別のことへと、移ってしまったからに他ならない。
どうやら、大日本帝国臣民は関心が薄れるのも、忘れてしまうのも早いようだ。
しかし、関東大震災が起きてから、二〇二三年で丁度百年。
確かにそれぐらい経てば、忘れてしまうこともあるだろう。
この小説を読んでいる読者と同じ世界から、『レイン』の世界へと誘われた千葉県民がいる。
琴坂琴美。彼女がこの世界に来た理由も、元の世界への帰り方も判らない。しかし『いつも通りの生活』が始まった。
何故ならそこには、自分の家族が『この世界の常識』を有して生活していたからだ。
どうやらこの世界にいた『琴坂琴美』は、別の世界へと行ってしまったらしい。となると、元の世界に戻っても?
それは、何も判らない。考えても無駄なこと。
設定が複雑になり、時代背景が複雑になり、主人公の実力不足もあって、未だ話は始まったばかり。
リアル日付換算にしても、何年も経過していないだろう。
1話~356話までは、ほぼ序章。時代背景と登場人物の紹介と言って良い。省略したい場合は、別作品として掲出している『レイン・設定情報』を参照されたし。
敢えて言えば、第一章に相当するであろう『ハッカー殲滅作戦(~647話)』が終わった所である。
現在第二章にあたる『アンダーグラウンド掃討作戦』を執筆中。
たまに本人も読み直して笑っている。
貴方がもし、同じ世界へと誘われたとしたら?
取り敢えずは傘を捨て、雨合羽を手にするだろうか。
いやいや。若しくは『銃』を取る? それとも『ペン』を取る?