【旧題:モブ志望の僕は、クラスの有名人に観察係としてスカウトされました】
「安藤くんと見ると、景色が違って見えるの」
文化祭の喧騒の中、クラスの有名人・桜井すみれは僕の袖を摘んでそう言った。
――話は少し遡る。
クラスの隅、窓際の後ろから二番目。そこが「背景(モブ)」である僕、安藤湊の定位置だ。
今年も波風立てずに平和に過ごす。そう決めていたはずだった。
クラスの中心で輝く彼女の「秘密」を偶然見てしまうまでは。
彼女の裏の顔は、匿名でクラスの日常を綴るエッセイ書き。
「私、どうしても主役視点になっちゃうからさ。隅っこのこと教えてよ」
その取材のために、僕は「観察係(ブレーキ役)」として、彼女に日常を差し出すことになった。
放課後の屋上での密会。雨の日の教室での本音。
主役とモブ。本来交わらないはずの二人が、一冊のノートを通じて言葉を交わす。
「安藤くんのその『色』が、私のお気に入りなんだけどな」
これは、物語の外側にいた僕が、彼女にとっての「命綱」みたいな存在へと変わっていく過程の物語。
「業務連絡」という名の理屈を積み重ねて、二人の距離が少しずつ縮まっていく、青春の記録。
※この作品はカクヨムにも投稿しています。(重複投稿)