「クラーラが嫌だと申しますから、あなたが行きなさい」
この国の縁談は、花嫁が持参する支度の縫い目で値踏みされます。
ヴァルトハイム伯爵家の縁談が十年まとまってきたのは、長女のわたしが
妹の名前で支度一式を縫ってきたからでした。四度まとまって、四度、妹が壊しました。
五度目のお相手は、先妻を三人亡くしたと噂される辺境伯。
妹が嫌がったので、わたしが代わりに嫁ぐことになりました。
十年ぶんの支度箱ごと。
けれど辺境伯は、箱を開けて布に手を入れ、こうおっしゃったのです。
「これを縫った者と話がしたい」
——ですから、実家のための支度は、もう縫いません。
わたしが縫うのをやめただけで、あの家の縁談は止まりました。
わたしは何もしておりません。ただ、針を置いただけです。
ハッピーエンド保証。
静かなスカッとと、手仕事の手触りがお好きな方へ。