王太子ユリウスから衆人環視の卒業パーティーで婚約破棄を言い渡された瞬間、侯爵令嬢アンジェリカは歓喜した。——やっと、自由になれる。
王妃教育も社交界も、全部うんざりだった。本当の夢は、大好きな薬草学を究めて静かに暮らすこと。晴れやかな顔で修道院行きを決めた彼女は、北へと旅立つ馬車の中で胸を弾ませていた。
ところが道中、魔獣に襲われたところを助けてくれた「銀狼卿」ディルクハルト辺境伯が、とんでもないことを言い出す。
「修道院より、俺の領地に来い。お前の薬草の知識が必要だ。ついでに、俺の妻にもなれ」
業務命令みたいな求婚を受け、戸惑いながらも辺境へ向かったアンジェリカ。しかし領地では、疫病の兆しが——。
一方その頃、王都では新たな婚約者を迎えた王太子が、国庫を揺るがす醜聞を起こしていて……?
辺境で「北の聖女」と慕われる彼女と、かつて彼女を捨てた王家。報いの時は、静かに近づいていた。