高熱をきっかけに前世を思い出したルクレツィア・フォン・ヴァルツェンは、自分が“いずれ断罪される悪役令嬢ポジションの公爵令嬢”だと確信した。
だが実際には、ここは乙女ゲームの世界ではない。
転生先は、剣の名門でも魔法の名門でもない、由緒正しいだけの宮廷公爵家。
本来なら断罪イベントなど存在しないはずだった。
そんなことは知らないルクレツィアは、
「最強になれば断罪されない」
という極めて力強い結論に到達する。
前世はレスリングで国体出場レベル、剣道と柔道の経験もある筋肉派競技者。
しかも心は乙女で、乙女ゲームをやり尽くした猛者。
ただし現実の恋愛経験は一度もなく、人間関係をつい“物語の文法”で読み違えてしまう。
その結果、王子の関心も令息の好意も令嬢たちの親しみも、すべて断罪への布石だと盛大に勘違い。
本人はいたって真面目に破滅回避をしているだけなのに、礼儀作法を体幹訓練に、舞踏を重心移動に変換し、ついには騎士顔負けの実力を身につけていく。
これは、存在しない断罪に本気で備え続けた結果、誰にも断罪できないほど強くなってしまった公爵令嬢が、周囲を盛大に巻き込みながら運命を変えていく勘違い令嬢譚。