王都の外れ、石畳の路地の角に、ある日突然現れた一軒のカフェ——「SOLITAIRE(ソリテール)」。
看板にはこう書かれている。
『お一人様専用。相席不可。店主からの不要な声かけは一切いたしません』
店主の名はカイン。無愛想でも無関心でもない、ただ「余分なことを言わない」男。
彼のもとに集まるのは、王都でも指折りの「強者」たちだ。
世界を救ったのに銅像を見るのが辛い元勇者。七年連続優勝しているのに
「次も勝て」という重圧に潰されそうな剣聖。天才と呼ばれ続けて友人が一人もいない宮廷魔術師。普通の食事を「補給」としか思えなくなった暗殺者ギルドのマスター。
カインは彼らの英雄譚を聞かない。悩みを掘り下げない。共感も説教もしない。
ただ、コーヒーを淹れる。おかわりを静かに置く。必要なときだけ、必要な言葉だけを使う。
その「距離感」が、いつの間にか一番の救いになっていく。
強くあり続けることに疲れたすべての人へ——ここは、何者でもなくていい場所の物語。