最弱。地味。荷物持ち。――そう呼ばれて追放された俺のスキルは《倉庫》。入れて、出すだけ。戦えない、役に立たない、と笑われた。だが、《保存》は腐らせず、《仕分け》は素材を見分け、《合成》は“組み合わせたことのないもの”を生み出す。
飢える街で食料を腐らせず、毒の混じった井戸から“澄んだ水”だけを抽出し、壊れた武具から“最適な一式”を組み直す。戦場に立たなくても、街は守れる。
助けたのは、空腹で倒れていた少女傭兵。彼女の一言が、俺の刃になった。
「誰かの『要らない』で、あなたの価値は測れない」
ギルド最低ランクから始まる再出発。裏でうごめく商会の談合、街路に広がる病、外壁を叩く魔獣群。勇者の剣が届かないところを、《倉庫》は届かせる。
――収納とは、世界の再配置だ。
在庫を回せば、街が回り、人が回る。奪い合いは“余らせる技術”で終わらせろ。
元仲間が掲げるのは、きらびやかな“正義”。だが、空の倉からは何も出てこない。
俺は目の前の腹を満たし、壊れた明日をつなぎ直す。
「地味」で終わらせない。“運用”で殴るファンタジー、開幕。