クロスロード帝国建国記 序章より
ウノシルディスに蛮族侵攻す。大公国危機を掲げる伝令隊が五日五夜、街道を爆走する。既に愛馬は倒れ、八頭目を乗り継いだ騎士は、体を縄で鞍に縛り付け、我が命、まだ果てるなと願い、ひたすらに駆ける。鳴り響く公都の早鐘、開かれる王門、謁見の間に続く紅の絨毯を騎馬は突き進む。黒髪の乙女は叫ぶ、直ちに軍を興すべし。しかし、公国騎士団は黙して動かず、10万の蛮族に臆して動かず、貴族の誇りは惨めに崩れる。黒髪の乙女は乞い願う、我われはヴァルキューレの意思を継し者なり。我に『戦旗』を下賜すべし。美しきピンクの頬ほほは、青白く震え、バラ色の微笑みを浮かべる唇は、紫色となりて、固く引き締められる。されど、その眼光は力強く誇り高き光を失わず。紅の戦旗を掲げ、黒髪の乙女が述べるは、決別の言葉。我われの最後の願いは、我われらの血を吸い込みし土を、いつの日にかクロスロードに葬られん事なり。決意を示す紅の戦旗は、力強き風を纏い、ヴァルキューレの乙女は、戦場に立つ。我われの戦旗を共に仰ぎ見る勇者は誰か、我われがヴァルハラに導きし勇者は誰か、クロスロードの騎士を継ぎし勇者は誰か。熱き勇者の魂が立ち上がる。己の矜持のままに愛馬を駈かり共に死せんと駆け参ず。クロスロードの騎士の誇り永遠に滅びず。
ウノシルディス地方に旧領の奪還を目指すウノ族10万が侵攻。
伝令の早馬が五日五晩、命掛けで駆けに駆ける。
王城の王門が開かれ、公都の鐘という鐘が早鐘を打ち急報を伝える。
しかし、帝国派が多数を占めるに至った貴族と大公国軍部は、侵入地域の放棄を決定。
その決定を良しとしない、本来の第一継承権者であるシルディア大公殿下は自ら戦旗の下賜を願い戦場に向かう意志を固めます。
「私の最後の願いは、私達の流した血が浸み込んだウノシルディスの土をいつの日かクロスロードの持ち帰り葬って貰う事です」
圧倒的大軍に決死の覚悟を決めたシルデイア殿下の決別の言葉に数多の騎士が立ち上がり共に戦う為に馳せ参じます。
この物語は、帝国の初代帝王でありながら、悪女とされる事の多いシルデイア殿下と騎士達の物語です。