ーー魔法よりも数式の方が強い。
そう言い切れる者は、この世界にただ一人。
魔法を操るには、「文学的才能」が必須。ゆえに生物は、魔法を使えない劣等遺伝子を削ぎ落とし、世界を文系脳が支配しつつある。残る理系脳は淘汰され、理論や知識は無価値、無意味、無駄と笑われる。
狼の獣人、ジル=アードストール。教師を辞め、冒険者となるも待遇は変わらなかった。どこでも理系脳が故に疎まれ、遂には追放までされる。だが彼は、女神イデアの与える平凡なスキルの一つーー『数学者』を持っていた。
本来は空間図形を作り出したり、グラフを可視化するだけのスキル。
「詠唱が魔法を創るなら、数式で世界を変えてやる」
理論と数式を武器に、逆境へ、文系至上主義の世界へと挑む。
これは、魔法よりも数式が強いことを証明するーー
異端の数学教師、ジルの逆襲譚。