中学卒業を間近に控えた日。立花・翔は駅で中学一年からの恋人である品野・咲が同級生の男子生徒と唇を重ねている場面を見てしまう。
 突然の浮気現場に彼は衝撃を受け、声を掛けることも出来ずに呆然としたまま家に帰ってしまった。
 彼女は自分に隠れて他の男と付き合っている。きっと彼女はもう振り返ってはくれない。
 脳裏に過ぎる確信は涙を流し、しかし絶望はこんなものでは済まされない。
 唐突に訪れる頭痛。意識が落ちた先で彼が知るのは、有り得ざる己の一生。
 無気力な高校生活。両親の死。現代に現れる巨大ダンジョン群。
 怪物に片腕を奪われた彼の生活は苦しく、碌な成果も出せないまま底辺を這いずり回り、とあるダンジョンで呆気なく怪物に食い殺された。
 あまりにも意味不明な未来に最初は信じずにいた彼も未来通りの出来事が続くことで信じ、そして理解する。
 このままだと自分は死ぬ。何も成せず、全てを失い、絶望の中で終わってしまう。
 ならば足掻こう。捨てられるものを全部捨てて、その上で残った大切な家族や自身の死を回避する為に。
 最早ただの中学生のままではいられない。未来を知るが故に、彼は末路が幸福で終わる為に路線を外れた。
 その行動が世界を変えることを、彼は知らない。