二〇二六年。
海上自衛官・海野弦一郎は、七年間付き合った恋人との別れのあと、東京湾の防波堤で酒を飲み、そのまま眠り込んだ。
そして目を覚ます。
そこは――昭和五年、一九三〇年。
しかも彼が立っていたのは、戦艦「長門」の甲板だった。
この先、日本がどこへ向かうのか。
誰が死ぬのか。
どの判断が戦争へつながり、どの選択が取り返しのつかない結果を生むのか。
弦一郎は知っている。
だが、彼は英雄になりたいわけではない。
未来の兵器を作って、日本を戦争に勝たせたいわけでもない。
ただ、本来なら戦争の中で死ぬはずだった人々を、生かしたい。
東郷平八郎。
高橋是清。
永田鉄山。
軍人、政治家、官僚、技術者。
そして、歴史に名前すら残らなかった無数の人々。
戦争を止めるために必要なのは、未来兵器なのか。
軍事力なのか。
それとも、戦争をする方が損になるほど強い「利益」なのか。
軍事、外交、財政、産業、そして人と人との縁。
未来を知る一人の海自少佐が介入したことで、昭和の歴史は少しずつ、本来とは違う方向へ動き始める。
これは、日本を勝たせる物語ではない。
戦争そのものを、起こさせないための物語である。