かつて焱《えん》という王朝があり、紂帝《ちゅうてい》という名の君主がいた。紂帝は暴虐の限りを尽くし、天下には紂帝への怨嗟の声が満ちていた。
時に焱の東方に虞《ぐ》という国があり、諸侯を率いて焱朝を討ち倒した。虞の君主姜猷《きょうゆう》は諸侯の請願を受けて王となり、焱朝討伐に功績のあった諸侯と自らの兄弟を大陸各地に封建した。
そして姜猷から数えて十代目。虚王《きょおう》は美女に溺れ、国政を蔑ろにした。やがて虞王朝は西方の異民族、顓《せん》に追われ東への遷都を余儀なくされた。世に言う虞の東遷である。
しかし、顓は東に逃げた虞王朝を攻めて支配下に置き、虞王を傀儡として王朝を壟断した。顓はまっとうな政治を行わず、畿内は荒廃し人心は荒み切っていた。
地上から正義が消え去り、混沌とした大陸はこの先どうなっていくのか――。
これは中国、春秋戦国時代に似たある大陸の物語。
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