「空気を読むのが上手い人」だと思っていた。
でも違った。
あの人は、空気を“作っていた”。
営業部の事務担当・水瀬湊は、会議のフォローも、他部署との調整も、雑談のつなぎも、何もかもをさりげなく回していた。
――誰にも評価されないまま。
ある日、「AIでいい」と言われたことをきっかけに、彼はそれらをすべてやめる。
すると職場は、静かに壊れ始めた。
会話は続かず、会議はまとまらず、調整は滞る。
誰もが気づかないまま依存していた「見えない仕事」が消えたとき、職場は初めてその存在を知る。
これは、空気を作っていた一人の事務員と、それを失った職場の話。