【運命に翻弄された元歌姫
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若き外務卿】
突然告げられた縁談の理由も、彼の真意も、誰にも分からなかった。
なぜ彼が自分を選んだのか——
真実は語られないまま、けれど物語だけは、静かに動き出した。
かつて「銀月の歌姫」として称えられたオフィーリアは、ある事件をきっかけに声を失い、王宮から遠く離れた離宮へと幽閉された。
待っていたのは、誰にも会えない孤独な日々と、「無価値」の烙印。
そんな彼女に告げられたのは、若くして外務卿となった実力者・シュルテンハイム侯爵テオバルトとの縁談だった。
北方交易路を築き上げた名声ある彼が、なぜ声を失った歌姫を望んだのか——その理由は誰にも分からない。
王命により新たな地へと旅立つオフィーリアの胸には、不安と恐れが渦巻いていた。
けれど、彼女を待っていたのは冷たい城ではなく、テオバルトの静かで確かな優しさだった。
「あなたがどんな過去を背負っていようと、どれだけ傷付いていようと、私は今ここにいるあなたが愛しい」
——言葉がなくとも伝わるものがあると知った時、運命は静かに動き出す。
※初連載作品です。少しずつ進む物語ですが、最後まで見届けていただけたら嬉しいです。