「君は追放だ。君のやり方は、効率が悪すぎる」
王都の錬金術師ギルドを追放されたアレン。理由は、前世――現代日本の製薬会社で品質管理をしていた記憶をもとに、温度を測り、製造記録をつけていたからだった。職人の勘がすべての世界で、彼の数字は誰にも理解されなかった。
辺境の街に小さな工房を構えたアレンは、封印していた現代知識を解禁する。
温度計。計量カップ。誰が作っても同じものができるマニュアル。
生まれたのは、効果は従来の一・五倍、値段は三分の一という、常識外れのポーションだった。
「え、これ安すぎない!? 傷が一瞬で治ったんだけど!?」
剣士リリアの口コミから火がつき、工房には冒険者が殺到する。弟子を取り、農家と手を組み、王国騎士団の指定業者になり――やがてアレンは気づく。自分が本当に広めてきたのは、ポーションではなかった。
「効くかどうかを、誰でも確かめ直せる」という、仕組みの方だったのだと。
品質の基準はやがて国の規格になり、彼は王立規格保安院の初代院長となる。農地を、製鉄を、蒸気機関を、疫病を、そして貨幣を。数字と記録は、国のかたちを少しずつ変えていった。
だが、その頃。
彼が根付かせた「正しさの証」を、逆手に取る者が現れる。
帳簿は合っている。手続きに瑕疵もない。それなのに、あるはずの一行だけが、どこにもない。
これは、最弱職と侮られた錬金術師が、現代の生産管理術で異世界に産業革命を起こし、やがて国の「信用」そのものを守る側に立つまでの物語。
※戦闘は少なめ。生産・経営・内政がメインです。