三十歳の薬歴官レティシア・フォーゲルは、王立施療院で薬の流れと診療記録を管理して生きてきた。ところが三十四歳の婚約者エドガー・ロスナーと、二十七歳の「病弱な幼馴染」クラリッサ・ヴェルナーに陥れられ、高価な治療薬の横流し犯に仕立て上げられてしまう。職も婚約も失った彼女に救いの手を差し伸べたのは、三十八歳の無口な北辺伯ジークハルト・ラインベルクだった。彼は領内の診療院で薬が消え、重病者向けの補助金まで抜かれていることに気づき、レティシアを主任薬歴官として迎え入れる。偽造診断書、消えた原本処方箋、慈善名義の寄付金、王都薬商会の裏帳簿。診療台帳を開くたび、王都でレティシアを追い落とした偽装療養の仕組みと北辺の薬不足が一本の線でつながっていく。もう誰かの都合のいい影にはならない。大人の薬歴官が記録と現場で嘘を暴き、仕事も居場所も幸せも取り戻す逆転溺愛譚。
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