九白真緒には前世の記憶があった。
その記憶と照らし合わせると、生れ落ちたこの世界に違和感を覚える部分があった。
だけど、それは些細なこと。
幼い時期から大人の知識を有していることに変わりはない。
人生の難易度が下がったことに喜び、裕福な家庭での生活を満喫していた。
特に、前の世界ではありえない魔法のような存在を知ってからは、それに夢中となる日々を送っていた。
――しかし、そんな幸せな状態は長続きしなかった。
ある時、とある少女に声を掛けられたことがきっかけとなり、この世界の事と自分の立場に気づく。
ここがマンガの世界で、目の前の少女が悪役令嬢であること。
そして、自分が悪役令嬢の取り巻きの一人であるということを。
なぜ、今までそのことを思い出せなかったかといえば、取り巻きに転生していたから。
真緒は、その作品のことが好きではあったが、脇役中の脇役である取り巻きのフルネームを覚えているほどのコアファンではなかったのだ。
次いで、作中で取り巻きが悪役令嬢と共に死亡することを思い出す。
このままでは、悪役令嬢のイベントに巻き込まれて死んでしまう!
――と思ったけど……、案外なんとかなりそう?
マンガで描かれていた年齢に至るまで、時間的余裕は充分。
今はまだ小学生のせいかクラス内は平和だし、クラスメイトとも上手くやっていけそうだ。
え、私が俳優かモデルじゃないかって? いや、変装ならできるけど演技はできないよ。
え、どの楽器の扱いが得意かって? いや、銃火器の扱いなら得意だけど、楽器なんて弾けないよ。
え、私の囲碁か将棋の段位が知りたい? いや、どっちもやったことないよ。テーブルゲームで得意なのはナイフゲームだけかな。
って、どうしてここまで私に対する間違ったイメージが浸透してるわけ?
それに悪役令嬢の様子が、ちょっとおかしいような……?