それはありふれたクラス召喚だった。異世界の王国に突然クラスごと呼び出された『道立山士幌(やましほろ)高校一年一組』二十一名と先生がひとり。入学式から三日目の出来事である。ただし山士幌町は面積こそ広いものの人口が少なく、小中高は一校ずつでしかも一学年一クラス。つまり全員が十年近くの顔見知り。
そんな学生たちの中、この春に山士幌に引っ越してきたばかりでまだ友達も少ない主人公、八津広志(やづこうし)は、召喚の際にこちらの世界にあるルール『神授職』に基づき【観察者】という職を得ていた。どうやら直接戦闘には向いていなさそうで実に微妙だ。他のクラスメイトたちが【聖騎士】や【聖導師】などという強そうな神授職を持つのを知り、この手の物語に造詣がある八津は追い出されてしまうのではないかと不安を持つ。
だがこのクラスの連中は違った。八津と一緒で【鮫術師】というこれまた微妙な職を得た綿原凪(わたはらなぎ)は言う。「大丈夫、ウチのクラスは頼りになるわ」。そしてそれは事実だった。
これは普通だけどちょっと普通じゃない高校一年生たちが、ゲームチックな異世界なのになぜかへんなところで生々しい現実や文化、大人たちの都合に振り回されながらも日本への帰還を目指す、そんな物語。キーワードは友情と努力と勝利だ。