「定時になりましたので、失礼いたします」
——それが、推しの王太子の側近に転生したわたしの絶対に譲れない信条。
前世はどこにでもいる平凡な平民の娘だった。
婚約者に一方的に捨てられ、失意のまま何者かに命を奪われた。
目覚めた先は、前世で夢中になって読んでいた物語の世界。
しかも、推しの王太子セレスティンの側近・フラウとして。
推しの傍で働ける喜びも束の間、王宮で見つけたのは、前世の自分を殺した犯人につながる手がかりだった。
犯人は、この王宮にいる。
側近としての業務は完璧にこなす。
ただし、退勤後は別だ。残業代の出ない王宮で、わたしは自分の時間を使って不正を暴き、真相を追う。——一つひとつ証拠を積み上げるたび、殺害の真相に近づいていく。
推しが隣にいる。それだけで動悸が止まらないのに、犯人の影はすぐそこまで迫っている。
前世の死の真相と、この世界の過去を繋ぐ糸を手繰ったとき——わたしは、本当の敵の顔を知ることになる。