禁忌呪術を使い、全てを失った来。絶望し、命を断とうとしたが何者かに助けられ、目を覚ます。
生きる意味など見出せないと、不満を募らせる来に、来を助けた男、成介は優しい言葉など掛けはしなかった。
望むものなど何もないが、不満ばかりが募る中、任務と称し、闇夜に溶け込みながら任務を遂行していく来。
『この世には、身を隠してでも生きなくてはならない理由を持つ者がいます。僕もその一人です』
同じような境遇の者がいる事を察したが、興味はない。
自分は一度死んだ……その思いは、向上心にはならず、感情が欠落したかのような来に成介は、クセのありそうな麻緋と共に任務を遂行させる。
それぞれに闇を抱え、闇に染まる。
そしてそれは、来が全てを失う事となった理由へと繋がっていく。
『白が正しいとも限りません。勿論、黒が間違っているとも言いません。そもそも、白が正しくて、黒が間違っていると決められるものではないでしょう』
式神を持つ成介に、正邪の紋様を持つ麻緋。最強とも思える術者たちが何故、闇の中でしか生きられなくなったのか……そして、来が自らの命を断とうとした事も全て悪因があった事に気づく。
『儺(な)』を持つ者は、黒の衣を纏って鬼を祓う……いつしかそれは、鬼を祓う者ではなく、鬼そのものと変わっていった。
転換された元よりの意味、それは彼らに重ね合わされていた事だった。
鬼を追い遣るは四方へと……。
四地相応。
東は麻緋。西は来。南は成介。北は京一郎が住んでいた方角であった。
来は、自分を含めて彼らにも『白羽の矢』が立っていた事を知り、初めから狙われていた事を確信する。
失った全ての意味を掴もうとする『闇犬』の、任務という闘いが始まる。