「フェルティナ嬢。私と婚約してくれないか」
とある国の辺境、セルヴァラント領。
その地を治める辺境伯の一人娘フェルティナは、誰もが認める美貌と才覚を備えた令嬢である。
そんな彼女のもとに舞い込んだのは、王都で国政を担う有力貴族――ヴァレンシュタイン公爵からの縁談話。
爵位も家格も、フェルティナよりも上。縁談話を断れる立場ではない。
だが、フェルティナにはどうしても、この婚約を断らねばならない理由があった。
「……絶望的なまでに、食事の嗜好が合いませんわ」
フェルティナは、こってり濃厚で重量感のある料理をこよなく愛する。
一方、ヴァレンシュタイン公爵が好むのは、ほぼ味のしない、淡白を極めた薄味の食事。
もし婚約が成立すれば、献立の主導権を握るのは爵位の高い公爵家側。
幸せな食生活を失う未来など、到底受け入れられなかった。
一目惚れから始まった婚約話ならば。
それを終わらせる理由も、また一つでいい。
「……何が何でも、太って見せなければ」
目指すは毎月10㎏の増量。
令嬢として変わり果てた容姿になってしまいましょう。
縁談話の破談をもくろみ、辺境伯令嬢は今日も食べる。
これは、婚約破談を目指し、夜な夜な屋敷を抜け出しては高カロリーな料理に舌鼓を打つ、とある辺境伯令嬢の背徳飯ライフ。
令嬢×飯×人情コメディ。
どうぞ、お腹を空かせてお楽しみください。
(旧題:めしうまでしてよ)