俺の高校には本物のアイドルがいる。
夜明けのアイドルなんて呼ばれている、今、人気上昇中のアイドル様だ。
廃校の危機で芸能クラスが新設された高校で、唯一の本物。
昼休みに校庭で行われているライブに熱狂する級友たち。その気持ちはわからないでもないけど、アイドルに興味のない俺からすると、彼らの応援は騒音以外のなにものでもなかった。
だから、静かな場所を求めて校舎裏に来たのだけど、すでに人がいた。
同級生。
大きいレンズの眼鏡をかけて、三つ編みをした地味な見た目の女の子だ。
悩んだけど、ここ以上に落ち着ける場所を思いつかなくって。
校舎裏唯一のベンチに座る彼女に、隣に座っていいかって声をかけると、お弁当をひっくり返しそうなぐらいあたふた。話し方もおどおどしていて、人馴れしていない小動物を思わせた。
そんな彼女にどうにか許可をもらってお昼を食べていると、おずおずと尋ねられる。アイドルに興味はないのか、って。ない、って答えて、それで終わり。
そう思ったけど、彼女はおもむろに眼鏡を外して、
「興味、……ない……?」
夜明けのアイドルと称される、宇宙一かわいい双子の姉にも負けない"素顔"を見せてきた。
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『芸能クラスに人気アイドルの双子がいるひとりぼっちな同級生は、俺にだけ姉に負けない素顔を見せてくる。』
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