男女比1:4。
男性の人口は女性の4分の1ほど。
また、この世界の約9割の女性がパートナーを持てていない。
そして、男女の行為は、現実と比べ何倍も刺激的なものになっている。
日常にあった些細な接触――袖が触れた、視線が合った――それだけのことで、この世界の女性の心臓はものすごい速さで跳ね上がる。
女性たちは、恋に飢えている。いや、正確には――恋をする機会そのものに飢えている。たとえ、運よく想いが届いても、翻弄され、浮気され、あっけなく捨てられる。
それがこの世界の、ありふれた恋の末路だった。
男たちはというと、生まれた瞬間から希少であるがゆえ、女性から求められ、尽くされる環境の中で、静かに牙を抜かれた。
外見を磨く必要がない。努力する理由がない。女性からの好意や愛情も当然のものと思い、感謝をすることもない。
この世界の男が悪いわけではない。そうなるべくしてなった、ただそれだけの話。
だが、そんな違い知ってか知らずか、彼――結城
悠(ゆうき
ゆう)は、今日も今日とて普通に生活し、無自覚に干上がった彼女たちの心へ優しさを振りまいてしまう。
彼が喉を潤し、何気なくテーブルに置き忘れた一本のペットボトル。それが隣に住む女性の心臓部に、抗いようのない――致死量の愛を打ち込んでしまうとも知らずに。