私は家族にも、婚約者にも、捨てられました。
幼い頃から聖絵師として修業し、人々に癒しの絵を描いてきた。
父は私の絵で豪遊し、私は家に監禁され、食事と睡眠以外はただ描き続ける日々。
けれど、婚約者の存在だけが私の心を支えていた。
彼は私を自由にしてくれると約束してくれたから。
ところがそれは突然だった。
「君との婚約を破棄したい」
理由もわからず、落ち込む私のもとに従妹が現れ、私の右手を壊した。
絵を描くことができなくなった私は、役立たずと父に罵られ、あっさり捨てられてしまった。
暗い森の中で途方に暮れていた夜。
月明かりの湖のほとりで、空想の中に描いた絵が光を帯びて浮かびあがる。
偶然それを見た人が言った。
「君は奇跡の絵を描く人なのか」
目が見えないその人は、心の目で私の絵を見た。
それが、私の新しい人生の始まりだった。
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