暗黒の空に赤い月が浮かんでいた。
死と腐敗の匂いが漂う戦場の中央に、ひとりの青年が立ち尽くしている。
二階堂漣司(にかいどうれんじ)
日本の中堅商社の社長だった男。
企業買収、株式操作、裏資金工作――あらゆる修羅場を渡り歩いてきた「経済戦争の猛獣」。
しかし、最後は裏切りに遭い、銃弾に倒れたはずだった。
気がつけば、血と硝煙にまみれた異世界の戦場。
その身体は若返り、胸には黄金の紋章が刻まれていた。
――《武装法人二階堂商会》設立許可。
――あなたに付与されるスキルは「企業買収(M&A)」。
――兵士、領地、技術、すべては株式化し、支配下に置くことが可能です。
頭の奥に直接響く神の声。
漣司は即座に理解する。
これは経済戦争ではない。異世界そのものを株式市場に変えるゲームだ。
「なるほど……ならば俺は、この世界を買い叩き、武力で守り抜く」
蓮は笑った。
その背後に現れたのは、黒衣の女魔術師――のちにCFOとなる美貌の参謀。
そして、鎧をまとった獣人傭兵団――のちに子会社化される戦闘部門。
血と金、剣と契約書。
経済と武力が交錯する、前代未聞の戦乱経営ファンタジーが幕を開ける――。