戦争で家族を失い、たった一人で生き抜いてきた男――神崎源一郎。
清掃業から身を起こし、警備、施設管理、スポーツ用品など次々と事業を広げ、一代で会社を築き上げた。
金も、地位も、成功も手に入れた。
ただ一つ――家族だけは作らなかった。
そして百十歳。
長い人生を終えた源一郎は、死後の世界で神を名乗る男から告げられる。
「君にはもう一度、人生を送る権利が与えられた」
「断る。百十年も生きれば十分じゃ」
ところが転生先は、剣と魔法が存在する異世界だという。
少しだけ興味を持った源一郎は、第二の人生で何を望むのかと問われ、こう答えた。
「次は――太く短く生きる」
もう仕事に人生を捧げない。
他人の顔色も窺わない。
やりたいことは、やりたい時にやる。
そう決めて始まった第二の人生だったのだが――。
目を覚ませば、なぜか赤ん坊。
しかも真冬の森に捨てられていた。
「話が違うじゃろが!!」
……と叫んでも、口から出るのは「おぎゃあ!」という泣き声だけ。
そんな源一郎を拾ったのは、小さな孤児院で暮らす人々だった。
前世では得られなかった、家族と呼べる存在。
初めて触れる魔法。
見たこともない魔物。
冒険者、獣人、エルフ、そして広大な世界。
何もかもが、百十年生きた老人にとって初めてのものばかり。
しかも神が、
「好きに生きられるだけの力を与える」
と言っていた意味を、源一郎はまだ知らない。
その小さな身体に宿された力が、この世界の常識から完全に外れていることも――。
これは、一度目の人生を百十年生き抜いた男が、
今度こそ我慢せず、
やりたいことをやり、
会いたい者に会い、
食いたいものを食い、
強いやつとは戦い、
大切な者は全力で守りながら、
第二の人生を思いっきり楽しむ物語。
本人の望みはただ一つ。
「今度の人生は、太く短く!」
――なのだが。
どうやら神様は、その願いを少々勘違いして叶えてしまったらしい。