戦前の物資を漁って生計を立てながら旅をしているスカベンジャーの少女・アリサ。
儲け話を聞かされて同業者たちと赴いた街は、戦時中の激戦区――今は無法者たちが占拠する廃墟都市だった。
差別や迫害にさらされながら過酷な戦いを続けるくず鉄拾いたち。それでも生きる意味を求めて、少女は愛銃である散弾槍を手に取る。
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……ねえ。
なんだい。
私たちは本当に奪うことしかできないのかな。
さあな。老いぼれの考えが手がかりになれば好いんだが。――私の云いたいのは本当に分け隔てなく与えることができるのはそれこそ神様だけってことだよ。私たちがある集団から奪っているのは確かだがそれを通して他の者たちに与えてやっているのもまた確かなことだ。結局のところ人間なんだからね。無から有を生み出すことはできない。それはスカベンジャーだけの話じゃないしこの星にへばりついているすべての人間が結局は何かを奪っているんだ。人間に限らず他の生き物だってそうだ。大なり小なりみんなスカベンジャーだよ。だが街に棲んでいるああした連中を殺して物資を奪いもっと真っ当な人間、――たとえばこの集落で暮らしている人びとに与えることが果たして正しいことなのかと訊かれると私にも分からん。お前さんの父親ならなんて答えていただろうね。
分からない。まだ決めつけたくないんだ。
そうだな。
さよなら。
ああ。さよなら。
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・第7回
キネティックノベル大賞
第三次選考通過
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