魔力量は一流。
火、水、風、土。
さらには治癒魔法まで使える。
魔法使いとして恵まれた才能を持つ青年、ノア。
――ただし、致命的な欠点があった。
「……飛ばねえ」
どれだけ魔力を込めても、魔法が発動するのは杖の先だけ。
火球は飛ばない。
風刃も飛ばない。
治癒魔法すら、相手に直接杖を押し当てなければ届かない。
魔法の射程――ほぼゼロ。
周囲から落ちこぼれ扱いされても、ノアは魔法使いであることを諦めなかった。
「だったら、当てに行けばいいだろ」
杖の先に魔法をまとわせ、敵を直接ぶん殴る。
本人はあくまで魔法使いのつもり。
なのに、その戦い方を見た人々は彼をこう呼び始める。
――《最強の槌使い》と。
しかも本人だけは、その正体が自分だと気づいていない。
魔法は飛ばない。
杖は壊れる。
金もない。
それでも魔力量だけは、誰にも負けない。
これは、魔法を飛ばせない落ちこぼれ魔法使いが、杖で敵をぶん殴りながら、なぜか全く別の方向で名を上げていく物語。