「大丈夫、大丈夫。誰にだって失敗はあるよ」
私の婚約者、エドガー・ナルシアンはいつもそう言う。
使用人が粗相をしても、大丈夫。
誰かが迷惑をかけても、大丈夫。
私が困っていても、大丈夫。
けれど彼がそう言うたびに、なぜか悪者にされるのは私だった。
使用人を注意すれば、私は厳しすぎる令嬢。
彼が誰かを庇えば、私は心の狭い婚約者。
彼が勝手に優しく振る舞うたび、その後始末をするのはいつも私。
そして私は気づいた。
彼の優しさを引き立てるための悪役を、私はずっと演じさせられていたのだと。
だから私は――もう、我慢するのをやめることにした。