伯爵家の令嬢サラは、王都中の夜灯と薬棚冷却魔導具を保守してきた修復師だった。けれど婚約者の伯爵令息ユリウスは、王宮祝灯式の前夜に言う。「修理係の手柄は妹リリアの名で出す。お前は工房の鍵だけ返して控えていろ」と。サラは泣かなかった。保守印は、名誉ではなく責任だ。彼女は工房の鍵と自分の印を正式に返し、すべての未確認修理欄を空白のまま封じて屋敷を出る。その夜、王都の夜灯、病院の薬棚、帰宅路の標識灯が次々と止まり始める。誰も知らなかった。灯りは魔力ではなく、サラが毎朝名前で確認していた生活手順で点いていたのだ。これは、手柄を奪われた修復師令嬢が、保守印を生活の責任へ戻し、自分の工房と居場所を取り戻す物語。
取得