リシェル・アルメリアは今日も無表情だった。
継母のカサンドラや義妹のミネットが嫌味を言うのもいつものことだからだ。
だから、当然今日も無表情でやり過ごすつもりだった。
だが、そうできなかった。
それは——
「お姉様ってほんと目障りだわ。邪魔」
そう言って、ミネットがわたしを屋敷の階段から突き落としたからだった。
私の身体は階段の中程へと投げ出され、ヒュッと冷えた空気が身体に入ってきたような気がした。
そして視界がぐるりとまわり、背中に走った痛みと、薄れていく意識の中で頭の中にあの声が入ってきた。
——
あんたってほんと鈍臭くてダメな子ね
——
あんた1人で生きていけるわけないでしょう
ねっとりと絡みつくような声。
二度と聞きたくないと思っていた声。
(……お母さん…?)
気づいた瞬間、記憶が雪崩のように流れ込んできた。
——
理恵、あんたはダメな子よ、何やってもダメ。
それは前世の私——理恵の記憶だった。
毒親に否定され続け、自分でなにかを選ぶことも許されず、反抗もできず、自由になりたいと願いながらも植え付けられた罪悪感でがんじがらめにされ、死んだように生きていた、あの人生だった。
(…嫌だ!そんなの…もう絶対嫌!!)
「もう…我慢なんて…したくない」