勇者召喚に巻き込まれた、ただの中年男。
目を覚ました時、彼は“幽霊”になっていた。
肉体はない。声も届かない。誰からも見えない。
王族の末娘と、城に仕える魔女を除いて。
本来召喚されたのは三人の勇者。
彼はその“余剰”として、異世界に取り残された存在だった。
彼には、一つだけ異質な力があった。
死者に憑依し、その最期の記憶を受け継ぐこと。
戦場で倒れた兵士。
陰謀に散った騎士。
名もなき人々の、後悔と願い。
憑依を重ねるたびに、彼は世界を知る。
そして同時に、自分自身の記憶を少しずつ失っていく。
辺境に追いやられた王族の末娘。
理想と現実の狭間で揺れる少女に、幽霊の男は助言を与える。
これは――
人生で何も成せなかった男が、誰かの未来を成させる物語。
やがて彼は、全てを託して消える。
それでも、死者の記憶は受け継がれる。