【退獄師】――それは、地獄から脱獄した元罪人である人食い【禍身】を倒す護国の兵たち。彼らは【干戈】という肉体の死を迎え武器として転生したモノたちと共に日々を守っている。
「私、死んだら何になると思う?」
八歳の夏。そう訊ねた祈瀬孝里の双子の妹・瑞里は、過去最悪規模の地獄顕現災害を発動させた父に殺され、太刀となり大勢を斬り、孝里を刺して封印された。
それから中学三年生になった夏休み。祈瀬孝里は退獄機関によって封印されている瑞里の所有者になるべく退獄師を目指していた。退獄師養成学校入学受験を四か月後に控え、退獄師等級乙一級の安西昇と鍛錬を行っていた。しかし、ある事件で禍身襲われ、利き腕である右腕を負傷し、物を強く握れなくなるという致命的な後遺症を負う。
それでも孝里は退獄師になるという夢を殺さなかった。そして十八歳のある日。孝里は左目に傷のある男・凰鶴奏士郎に出逢う。
彼は甘言を用いて孝里を日本最古の退獄組織【黎明社】に勧誘する。その思惑とはいったい――?