その追放は、正しかった。
だからこそ、誰も止められなかった。
王国の制度設計官アルトは、
「慎重すぎる」「最悪を想定しすぎる」という理由で、
改革の妨げになる存在として追放される。
改革は成功した。
国は速く、強くなり、数字は改善し、
誰も困らなかった。
――ただ一つを除いて。
「間に合わなかった」という死が、
静かに、確実に増えていった。
それは陰謀でも、失策でもない。
すべて正しい判断の結果だった。
やがて国は気づく。
追放したのは無能ではなく、
「失敗を失敗として止める役目」だったことに。
だが、理解されたときにはもう遅い。
アルトは戻らない。
戻っても、救えないからだ。
これは復讐の物語ではない。
正しさが遅れた世界で、
それでも“戻れる場所”を選んだ男の物語。