「貴様さえいなければ」と婚約破棄されたエリアーナ・バーンシュタインは、隣国の森へ追放された。
――最高だった。
王太子妃の義務も、令嬢としての作法も、全部関係ない。好きな古代文明の研究だけをして生きられる。漆黒のローブを纏って「黒龍よ、深淵の底より応えよ!」と叫べる。これが本当の自由だ。
……ただ一つの誤算は、その瞬間を瓶底眼鏡の怪しい学者に目撃されたことだった。
毒にしか見えない紫色のスープが絶品だと村人に知れ渡り、古代の巨大ゴーレムを修復して畑を耕させ、王宮からの使者には「断ります」と即答する。気づけば「恐ろしい魔女様」と呼ばれていたはずが、いつしか村人にも離宮にも居場所ができていた。
そして手帳の「意図不明」欄が日々増え続ける怪しい学者の正体は、隣国アルテシア王国の第二王子だった。
世界に退屈していた天才王子と、研究しか見えていない追放令嬢。
少しずつ惹かれ合う二人が辿り着くのは、離宮での研究生活だけではなく、新しい国の未来を築くという選択だった。
これは、「ざまぁ」の先で、本当の自由を見つけた一人の研究者の恋と人生の物語。