「もう、頑張らなくていい」
その一言を、十二年ぶりに聞いた。
前世は社畜のまま過労死して、転生先で“聖女”として神殿に拾われた私は、それからずっと「大丈夫です」と笑い続けてきた。大規模治癒で倒れても、誰も私の名前を呼ばない。代わりは?
と、大神官の声だけが床に落ちる。
そんな私を、護衛騎士のレオンが連れ出した。
辺境の村の朝。焼きたてのパンと、誰にも急かされない湯気。
「凛ちゃん」と村人に名で呼ばれた瞬間、私は初めて、自分のために泣いた。
神殿はもう機能していない。王都は私を取り戻そうと使者を寄越す。でも私は、自分の口で「お断りします」と言う。
日陰で命を削っていた手が、ようやく自分の指を覚え始めた——使い潰された聖女が、もう一度だけ生き直す、辺境再生×ざまぁ×溺愛の物語。